「スピードラーニング」(2)

さて、実際に上級クラスの一回目を聞いてみました。少し各パラグラフが長くなりますが我慢してください。

  • 英文はスタンダードのアメリカ英語でスピードはほんの少し遅め(TOEICのリスニングテストのスピードに比べて)。難易度は3級後半(TOEIC700点台)の人なら一回目からほぼ大意を取りながらついていけるレベルでしょう。ちなみに1級・初段であれば、一発目からシャドウイングしながらついていけるレベルです。中級・初級の内容はもっと語彙も容易で、区切りも短いフレーズになっていると予測されます。ただスピーキングスピードはレベルを通じて同じだそうです − 最初のくだりをサンプリングしましたのでこちらで。
  • 内容の難易度から判断するに、この教材に一番適したレベルは5級・4級あたりでしょう。基本的には、文法・語彙などの英語の言語体系がまだ殆ど頭にない状態の人、あるいは受験英語は経験したもののその後英語に接することもなく何年も経ってしまった人などが初・中級コースでリスニングのスキルを習得し始めるのに向いていると思います。上級コースだと3級前半くらいの人にと思いますが、このレベルの長さの英語を音だけで日本語に結びつけるのが効果的かどうかは少し疑問が残ります。
  • なぜならば、「文法などにこだわらずに赤ん坊のように聞きつづけることでだんだん英語が口を突いて出てくるようになる」と説明の中にありますがこの部分はyes and noだと思います。日常よく使われる簡単なフレーズレベルであればそうかもしれません。しかし、ある程度の長さの文章をきちんと聞けて話せるようになるには、こういった教材と平行して文法を他のinput・outputの訓練を通じて習得するのはMUSTです。赤ちゃんが幼児期・少年期を経て文法を身につけるまでのあの膨大なinputを成人になって聞き流すだけで身につけようと思わない方が良いでしょう。かえって非効率だと思います。
  • 活字を経ずに英語の音を直接、日本語の意味へつなげて習熟するというところがこの教材の「みそ」でしょうね。日本人の初心者が一番苦手なところです。殆ど音を聞く訓練を受けてないわけですから無理はありません。私が今勉強中のタイ語(超初心者)でこの初級・中級コースのようなものがあればやってみたいところです。
  • 以前に「コンプレックスの原点と障害」というページで、工場の主任クラスの人間が東南アジアなどの工場に派遣され、驚くほどのスピードでその国の言葉が上達することが多いということに触れました。殆どの人が高卒でとても高校時代も英語が得意でなかったであろう人たちもです。一つは今まで学校でいじめぬかれた英語と違い、コンプレックスがないからだ、ということを言いました。そして、もう一つは彼らは現地の言葉を活字を経ることなく、直接耳からのリスニングを主としてinputの習得をしている(というか、せざるを得ない)ということがあります。それによって彼らは抜群のリスニングスキルが身につけると同時に「耳」だけで覚えた語彙をよりうまくoutputするわけです。これと同じような効果をこの教材はもたらすような気がします。
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